タックル時の脊柱の前弯及び股関節の屈曲角度について
この話は、ぼくが本学医学部を問わずラグビー部に在籍している間は絶対にしないと決めていました。
今はもう完全にラグビーをやめたので、タックルについて……お話します。
タックルを大きく3つのパートで考えますと、
①起こり
②接触
③接触以後
に分けられます。
となります。ぼくは4つのパートで考えていたのですが、とりあえずは3パートで十分です。
各パート説明していきます。
①起こり
ここから敵との接触までが即ちタックルの所要時間です。当然これは短ければ短いほどいいです。
つまり接触姿勢になるまでの素早い体重移動が求められるわけですね。
以前ぼくのツイッターにこんな動画を上げました。
ウォッチからタックルのやり方動画にしてやったから100万回いいねしろ
— ぼくひで (@anal_pig) June 21, 2018
イメージとしてはジェットコースターだぞ
スッと膝を抜いてググッと地面を滑ってガッって当たる感じ pic.twitter.com/XUJTCoCpjX
これは縮地や送り足と呼ばれる移動法で、
大腿四頭筋を弛緩させて膝を抜き、前方への体重移動にかかる時間を短縮する基本的なテクニックです。
まずはこれをマスターしていただきます。
(実際にはこれができる人間が本学及び医学部ラグビー部におらず、また改善の姿勢も見られませんでしたので、ここでぼくのタックル講座は終了しました)
②接触
ここが今回のメインテーマです。即ち「接触時にどのような姿勢をとるべきか?」ということですね。
ぼくの最終的な結論としては上の動画の通り、
「下腿が地面と平行、大腿が地面と垂直、上体が地面と平行」となります。ちょうど膝関節、股関節ともに90°屈曲させています。
実際には多少上向きとなるのですが、ともかく下腿と上体の角度は揃えます。
なぜこのような結論に至ったかを説明いたしますと、単純にこの姿勢が前からの衝撃に強く、及び姿勢完成までの所要時間が短いからです。
低いタックルを実現させるためには股関節を落とさなければなりません。
股関節を落とすに際して膝関節を落とさないと、大腿が地面と平行になってしまって前方衝撃耐性が失われます。後ろにひっくりかえってしまうわけですね。
①で説明したタックルの起こり、即ち膝を落とすことと合わせて考えると、前方に倒れこむような姿勢を作ることが望ましいのです。
股関節、及び膝関節の屈曲角度を90°としたのは、この角度が最も射出性能に優れているからです。
実際のタックルではこの姿勢を作った少し後に敵に接触するわけですが、この時前方に向かって身体全体を射出します。
「できるだけ高く、思いっきりジャンプしろ」と言われれば、皆さんはどれぐらい膝を曲げてから跳ぶでしょうか。
ぼくは自分でビデオを撮って確認しましたが、上体を地面と垂直に固定した状態では膝関節が90°のときが最も高く跳べていました。
このあたりは個人差もあるでしょうから、自分に合った角度を選択すればいいと思います。
ただしあまりに股関節を屈曲させないと、姿勢完成までの時間が長くなりすぎます。長い棒は倒れるのに時間がかかるのと同じですね。
次に接触時の脊柱について。
接触時の衝撃を逃がさないために、脊柱(胸椎及び腰椎)は真っ直ぐであることが望ましいです。
といっても、通常脊柱は胸椎が後弯、腰椎が前弯していてS字型になっており、それ単体が衝撃を分散させる構造となっています。
このいらぬおせっかいがタックルの際には非常に邪魔ですね。ぼくのタックルの歴史はこの脊柱との闘いの歴史でした。
さて、では「胸を張って、腰を曲げれば脊柱は真っ直ぐになるのか」と言われれば、そこまで単純ではありません。
まず胸椎について。これは多くの人が誤解しているのですが、「胸を張る」というのは肩甲骨を寄せることではありません。これでは胸椎の後弯を正すことはできません。
後弯を矯正するためには、「へそとみぞおちの距離をあける」ことです。これにより自然と胸椎が直線となります。
次に腰椎について。これは腰を曲げるのではなく、逆です。さらに反らして前弯させてください。
というのも、タックルに際して股関節を屈曲させていることにより、腰椎が後弯してしまっているからです。
つまりはいずれも前弯させればOKです。
ただし、胸椎はともかく、腰椎の前弯がかなり難しい。上の動画には後輩のタックル姿勢もくっつけていますが、見事に腰椎が後弯してしまっています。
君らはこれ
— ぼくひで (@anal_pig) June 21, 2018
言っとくけど前ももに力入れて待ち構える守備は進化の袋小路だからな
これやる限りは今以上は上手くならんよ pic.twitter.com/Dg6YvYbvTF
「タックルの際にそこまで色々考えられないよ~」という方もいるでしょう。
実際ぼくもそうでした。ですので簡単な矯正法をお教えします。
近視の人がそれを矯正する際、遠くを見る訓練をする~なんてことは前時代的でしょう。
目を鍛えなくても、メガネをかければよろしい。メガネは凹レンズでして、焦点距離の短くなった水晶体と合わさって無理やり焦点を網膜に合わせています。
つまりは腰椎の前弯を意識せずとも、もともと腰椎の前弯を強めておけば全て解決です。
寝るときはうつ伏せで。下半身の位置に布団を重ねて高く。胸の位置には枕をかませる。これを1年も続ければ自然と病的に腰椎が前弯します。
ぼくは6年続けました。
「ひでは自転車に乗るときの姿勢が良すぎてキモい」
と言われたことがありますが、ぼくは腰椎が病的に前弯しているために、「背筋を曲げられない」のです。
ラグビー部に行かなくなった去年の11月からは、久しぶりに仰向けで寝る生活を送っています。
最近は机に突っ伏して寝ることもできるようになりました。
③接触以後について
接触以後はそのまま敵を突き抜けます。
筋力には特異性の原則というものがあります。この突き抜ける力を強くしたいのならば、
スクワットはパラレルスクワットで。ゆっくり下までおろし、大腿が地面と平行になった瞬間に、膝がロッキングする手前まで一気に上げる。
というように伸展反射を利用したトレーニングを行うとよいでしょう。先ほど述べた射出力を高める効果があります。
また、タックルに必要な体幹を同時に鍛えたいのであればザーチャースクワットやスミスマシン・ハックスクワットを同じように行うことをおススメします。
単純に筋肥大させたいならばフルボトムでノンロックスクワットを。ぼくはもうこれ以外あまりやっていません。
また敵の足を抱えて倒す場合、広背筋を使って敵を引きつけた方が強い力をかけられます。
ただし多くの人は弱い腕の力で引いてしまいます。感覚を掴むためにはチンニングやロウイングを高重量で行うトレーニングが必要ですね。
広背筋を使う意識ができない場合、小指と薬指を使って尺骨神経のみを動員させて引くか、
もしくは手を橈屈・母指を伸展させ、解剖学的嗅ぎタバコ入れに相手の足を引っ掛るように引きつけてください。
以上です。ここまでやる人は部内にはいないでしょうし、トレーニング量も合わせて彼我の温度差が部から出ていく大きな理由のひとつとなったわけですが……その辺は本学の部誌にも書いたのでここではいいです。